初心者のためのパソコンのおはなし
第3話
噂の表計算ソフトにチャレンジ・・・の巻
 公務員の中村さんは、部下が30人もいる課長です。普段からワープロは使いこなしてお り、キーボードには毎日のように触れています。ベテランといえばベテランの部類です。し かし、表計算というものを使ったことがありません。自分のパソコンには、すでにそのソフ トが入っていて、ときどきクリックしては真っ白な表を出し、そそくさと終了していました。 職場である役所でもかなり使っており、自分も表計算の本を何冊か持っていたのですが、い まひとつ使う気が起きませんでした。  本日の講師、一関青年会議所をめでたく卒業した「はなこん講師」(実在しません)は、 そんな中村さんの普段の立場をよく知っておりました。 ●中村さん  なかなか時間がなくてね。ははは・・・ついに、噂の話コン会講習会に来てしまいました。 ま、ひとつ、お手柔らかにお願いします。 ●はなこん講師  はい、今日のテーマの表計算は、中村さんのような立場の方には、ほんとうに実用的なも のですね。どうぞ仕事の話などもまじえて、気軽に取り組んでみましょう。それにしても、 ちょっと息がくさいですね・・・、あ、昨日も駅前で1時まで飲み会・・。あいかわらずで すね。この後、一杯ですか?ははは、ま、考えておきますけど、話を進めましょう。  まずは表計算の用途ですが、すでに何冊か本を読んで知っておられるようですね。ひとつ は会計業務など事務計算によく使われます。どんな仕事かというと、簡単にいえば、表のマ ス、セルといいますが、そのセルひとつひとつに高級な電卓を並べ、左側の窓口で、なにか 数字を打ち込めば、それを隣の電卓へすぐ伝え、どんどん隣へ流れ作業のように引き渡し、 最後には右側や下側に、合計値などの結果が出る、という使い方です。  次は、データベースでしょうか。沢山の名前や住所、電話番号などを保存して、その中か ら、ある特定のデータを抜き出したりするような業務ですね、そうした利用方法も多いです。  また、あまり知られていませんが、定型文書のワープロとして利用できます。普通のワー プロソフトと違うところは、今日の日付を自動的に表示したり、金額合計値などの計算も自 動的にやってしまうという便利さがある、ということです。 ●中村さん  うーむ。そこらへんの便利さは、何度か聞かされてはいるのだが、いまひとつピンとこな いんだね。実は部下に、何度か聞いたんだけれども、よく理解できなかったんだ。立場上、 好きなようにやってみろと答えてのだ。ふふん、君、それが上司のかがみというものだね。 それに比べてオレの上司といえば・・いや、それはともかく、情けないことに3冊読んだけ どよくわからず、ちょっと焦っているんだ。まず実際に操作してみて、便利さを実感してみ ようかと思うんだがね。 ●はなこん講師  それはいい方法です。まず慣れることですね、上司にも・・いえ、独り言です。  表計算ソフトは、たしかに、ある程度使用した経験がないと、合理化の着想といいますか、 こんな業務に使おう、などと発想するこができません。あ、しかし大丈夫です。課長の部下 が表計算をやっているとはいっても、しょせんはお役所仕事ですから・・あ、失礼しました。 つまり企業や大学の研究室のような込み入った使い方ではなく、定型業務ですから、ほんと うに入門的な使い方で十分なのです。ですから、いまからじっくり取り組んでも、心配いり ません。ということで、最初からやってみましょうか。  まず表計算Excelを立ち上げて、真っ白なシートを表示します。Excelはいろい ろ改良飯がありますが、ここではバージョン5で説明しましょう。  縦の方向を行といい、1、2・・と番号がふられていますね。横方向は列で、A、B、C 列と名前が付けられています。表のマス、セルといいますが、その位置を、たとえばB列の 3番目、ここですね・・この場所であることを示すのに、セル位置B3と呼びます。  次に、選択です。マウスで場所を指定して、クリックすると、灰色の枠が現れますが、こ れが選択です。クリックしたまま縦横に動かすことを、ドラッグするといいますが、そうす るとその範囲が黒く塗りつぶされます。これを範囲選択といいます。あ、中村さん、そんな に肩に力を入れて押さなくてもいいですよ。今後、A2のセルを選択して下さいとか、B2 からD6まで範囲選択して、と言いますが、もう意味がわかりますね。  セルの選択のようす 【図1】 ●中村さん  ふーむ。疲れる作業だね。コンピュータって。で、なんだね、その計算って。合計ってや つをやってみせてくれないか。 ●はなこん講師  積極的で結構なことです。まずは図2のように、A1の作業のタイトル名「こずかいちょ う」を入れ、なまえやこずかいの金額を入れてみましょう。はい、セルをマウスで指定して、 そうしてローマ字で打ち込んで、矢印キーで場所移動します。失敗したらその場所へ戻って、 この数式バーと呼びますが、ここで修正できます。数値は、テンキーというものを使って入 れるといいかもしれませんね。 【図2】     A      B      C 1 こずかいちょう 2 なまえ     こずかい 3 まるちゃん     100 4 はなちゃん     130 5 はなわくん     5200 6 まるおくん     1200 7 ながさわくん    90 8 みぎわさん     300 9 ごうけい  書き込んだら、B9を選択します。その後、ツールバーにこのシグマの記号がありますね。 これをクリックすると、あら不思議、=SUM(B3:B8)という指揮が現れ、B3からB8まで点線 で囲われます。シグマとは合計のことです。あ、知っていましたか。表計算では、よけいな お世話かとは思いますが、きっとこの合計値のことだろうと勝手に解釈して、合計計算する と思われる範囲を、このように囲んでしまいます。幸いにも、まるちゃんからみぎわさんの こずかい所持金の部分が囲まれていますから、ここでリターンキーを押せば、はい5人分の 合計金額が示されます。 ●中村さん  ほほう。べんりなもんだ。でも合計値を変えたいときはどうなるんだろう。たとえばまる ちゃんからはなわくんまで、とか、はなわくんを除く全員の合計値とか。 ●はなこん講師  おお、鋭いですね。さすがはミス指摘名人、じゃなく、完璧な業務の追及者ですね。まず、 上から何人かの合計でしたら、いったんB9を選択すると、計算バーに、=SUM(B3:B8)の式 が現れていますね。このB3:B8が合計の範囲を示していますから、はなわくんまででしたら、 B8の8の字を、5に変え、=SUM(B3:B5)という具合に修正すればいいですね。どうですか、 3人分の合計値になりましたね。  次は、はなわくんだけを除いた合計値ですか。これはちょっと工夫が必要ですね。全員の 合計値=SUM(B3:B8)から、はなわくんの値B5を引けばよく、これも数式バーで修正しまし ょう。=SUM(B3:B8)-B5、どうでしょうか。はなわくんを抜いた合計値になりましたね。 ここで言葉を覚えましょう。SUMとは和の意味、シグマと解釈していいですが、これを表計 算では「関数」と呼んでいます。関数というと三角関数SIN、COSがありますね。あ、 難しい話はいやですか。いえ、ここでいいたいのは、SUMも関数でSINと同様に、この結 果を足したり掛けたりすることができる、ということです。シグマ記号をクリックしてSUM が現れたけれど、数式の一部にできる、ということですね。つまりSUM(B3:B8)-B5という 数式にして使ったり、もし2乗値が欲しいなら、SUM(B3:B8)*SUM(B3:B8)、あるいは合計 値に1000を掛けたいなら、SUM(B3:B8)*10000というように、SUM(B3:B8)を自在に 使うことができるのです。  うーん・・・・まだ夕べの酒が残っているのかな
●中村さん  うん、なるほど。わかったようなわからないような・・・ほろ酔い加減の気分だね。結局 は、関数の種類をたくさん覚えて、それをうまく組み合わせて使えばいい、ということかね。 つまり、そうした関数をあらかじめ知っている必要があり、表計算操作以前の情報処理の知 識が必要、という気がするのだが。 ●はなこん講師  SUM(B3:B8)-B5というような発想のことを、アルゴリズム、計算方法と呼びますが、これ は表計算操作とは別のものですね。全体から不要な物を差し引く、という発想、作戦は、知識 というより発想して作るアイデアそのものですね。こういうものはいくら表計算に慣れたから といって発想できるものではなく、実践的な経験が必要です。そうですね・・・将棋で例えれ ば、SUM(B3:B8)部分や-B5などは、飛車や角の駒のそれぞれの動き方に相当し、それを組み 合わせた、SUM(B3:B8)-B5の式は、高次の定石、中飛車とかやぐらに相当する発想です。そ ういう定石レベルの知識を得るには経験が必要です。習えるものかどうかわかりませんが、普 段から馴染んでいる必要があるでしょうね。逆に言えば、そうした発想ができる部下をよく把 握して、いざとなったら尋ねたり、批評してもらうようにして腕を上げればいいのですね。  今回の表計算入門も、そのたとえでいえば、基本的な駒の動かし方と、定石を同時に説明し ているようなものです。切り放して説明するわけにはいきませんから、わかったようなわから ないような、ほろ酔い気分になったのかもしれませんね。 ●中村さん  うーむ。将棋の話ならオレも一言いえるが、そうか、そんなふうに取り組むわけね。しかし 時間がかかりそうだね、これは。表計算ってもっと自動的で便利なものかと想像していたが、 意外と原始的な面があるのだね。では、ほかの「定石」のようなものも紹介してくれないか。 ●はなこん講師  では次に、そのこずかいで50円ゲームをすることにして、何回遊べるか計算してみましょ う。回数ですから、たとえばはなちゃんは130円手持ちで、わり算すれば2.6回になりま す。しかし0.6回などという遊び方はなく、はなちゃんは2回まで遊べる、という切り捨て 計算をします。ここで、次のような発想をします。「きっと小数点以下を切り捨てる関数があ るはずだ」と。  表計算では、そうした要望に応える関数を、予め用意しています。それを探せば、INT、 Integer、整数の略称ですが、そうした関数が見つかります。ということで、たとえば C3、まるちゃんの遊べる回数セルを選択した後、そこに、=INT(B3/50)と打ちます。50円 でこずかいをわり算し、小数点以下を切り捨てて「遊べる回数」にするのです。そしてC3セル の右下に、ちょっとコツが入りますが注意深くマウスカーソルを近づけると、あ、まだ酒が残 っていますね、落ちついて、はい、そうすると、細い十字のカーソルの記号になります。これ はセルのコピー機能で、そのまま、みぎわさんのセルまでドラッグすると、=INT(B3/50)の B3が、位置に対応して自動的にB4,B5と変わり、全員分の遊べる回数が計算できます。(図3) 【図3】     A      B      C  1 こずかいちょう 2 なまえ     こずかい  げーむ回数 3 まるちゃん     100     2 4 はなちゃん     130     2 5 はなわくん     5200    104 6 まるおくん     1200     24 7 ながさわくん    90 1 8 みぎわさん     300     6 9 ごうけい      7020    ●中村さん  おお、これは面白いね。いちいちひとつづつ計算式を書かなくてもいいんだな。なるほど、 これは楽でいいね。 ●はなこん講師  そうですね。あまり気にしていないのですが、この計算式コピーは知らず知らず使ってしま う機能のひとつですね。ただここで気をつけなければいけないのは、絶対セルと相対セルの話 です。ここで見ましたように、ただコピーした状態では、表計算は変化するものはB3部分だけ だ、と勝手に判断して、もしドラッグする方向が行方向なら次はB4だ、と決めつけていきます。 では次に、ゲーム代金をC1に書き込んで、その代金を自由に変えられるものとして計算をして みましょう。つまり50円ゲームでなく100円だったら何回遊べるか、という計算をしてみ ます。今度は、図4のように、まずC1セルに50と書き、1回分のゲーム代とします。そして C3のセルに、=INT(B3/C1)と書きます。C1にはゲーム代が入っているので、これでC3には まるちゃんの遊べる回数、2が現れます。これをみぎわさんまで数式コピーしましょう。そう すると、はなちゃんのところに#VALUE!という文字が現れたり、変な結果になりました。  C4セルを選択して、数式バーを見ると、=INT(B4/C2)となっていますね。C2が分母になっ ていますが、C2には「げーむ回数」という文字が入っています。文字で数値をわり算した、と いうエラー表示が、 #VALUE!なのですね。分母はC1のままになってもらいたいのに、コピー 機能で勝手にC1がC2,C3と変えられ、こんな結果になったのです。(図4) 【図4】     A      B      C  1 こずかいちょう        50 2 なまえ     こずかい  げーむ回数 3 まるちゃん     100     2 4 はなちゃん     130 #VALUE! 5 はなわくん     5200   2600 6 まるおくん     1200  #VALUE! 7 ながさわくん    90 0 8 みぎわさん     300  #VALUE! 9 ごうけい      7020  これを解決するのが、「絶対セル指定」です。今度はC3セルに、=INT(B3/$C$1)と書きまし ょう。これは分母C1のCも1も、コピーしてもそのまま変化しないことを意味します。これで 数式コピーすると、今度は大丈夫ですね。50できちんとわり算した回数が出ているはずです。 この$は、その記号や数字を固定する、という働きをもちます。ほんとうは、C1の1の部分だけ が変化してもらいたくないので、C3には=INT(B3/C$1)と書いてもいいですね。コピーの便利 さを実感するためには、こうした基本を知っておく必要がありますね。いいですか。ちょっと、 ちょっと中村さん・・・・  はなこん講師はここで、中村さんがうとうとしていることに気が付きました。そうか、ちょ っととばしすぎたかな、少し休憩を入れることにしました。ハッと我に返った中村さん、ポケ ットからたばこを取り出して、待ちきれずに火をつけました。  「ははは、ごめん。まだ酒が残っているようだ。どや、今晩、一杯いこうか?」  あ〜あ、気を付けてね。公務員の飲み食いは。 休憩後の中村さんの講習メニューはこうなっています。  <文字の大きさを変える>  フォントってなに?  ポイントの値、文字飾り <罫線の書き方>  外枠と下と右と・・・ <グラフの描画>  円グラフの書き方
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(c)話せばわかるわかるコンピュータの会,1998.5
Hanaseba Wakaru Computer no Kai, Ichinoseki,Japan,1998